「ソルフェージュは子供のうちにやっていないと無理」——音楽の世界でよく聞く言葉です。聴音も新曲視唱も、絶対音感が育つ幼少期にこそ身につくもので、大人からでは手遅れだ、と。
結論からお伝えします。ソルフェージュは、大人からでも身につきます。 ただし、子供と同じやり方ではなく、大人には大人の学び方があります。私自身、高校生になるまでソルフェージュを受けたことがなく、高3の夏から猛特訓で音大受験に間に合わせた経験があります(その実体験はこちら)。この記事では、その経験と指導経験の両方から、大人のソルフェージュ習得についてお話しします。
そもそもソルフェージュとは何を鍛えるものか
ソルフェージュとは、聴音(流れた音を楽譜に書き取る)、新曲視唱(初見の楽譜を歌う)、リズム打ちなどを通じて、音楽を正確に「聴き・読み・表す」力を鍛える訓練です。音大受験では必須科目ですが、受験に関係なくても、演奏の土台として絶大な効果があります。
ソルフェージュの力がつくと、譜読みが速くなり、暗譜が安定し、自分の演奏のズレに自分で気づけるようになります。つまり、すべての練習の効率が底上げされるのです。
大人の強み:「感覚の言語化」という武器
なぜ大人からでも身につくと言い切れるのか。それは、ソルフェージュの本質が、大人の得意分野と重なっているからです。
私の感覚では、ソルフェージュとは感覚的にとらえているものを、言語化して説明するという営みそのものです。仕事の場面で、なんとなく感じている違和感を言葉にして人に説明しなければならない状況——誰しも経験があると思います。ソルフェージュはまさにあの感覚です。「今の和音、なんか明るい」を「長三和音」と名づけ、「この音の流れ、気持ちいい」を「ドミナントからトニックへの解決」と言語化していく。
子供は感覚で丸ごと吸収しますが、大人は構造で理解して感覚に落とすことができます。理屈の裏付けがある分、一度身につけたものが崩れにくいのも大人の強みです。
現実的な訓練の進め方
とはいえ、魔法はありません。ある程度の訓練は必要です。 ポイントは「長時間を週1回」ではなく「短時間を毎日」です。
聴音:1日10分でいい。単音→音程→和音→旋律と段階を踏みます。今はアプリや音源教材が充実しているので、通勤時間も訓練時間に変えられます。
新曲視唱:やさしい楽譜を、階名で歌う練習を毎日1〜2曲。ピアノで音を確かめながらで構いません。「歌える=音の関係が頭に入っている」ということなので、視唱の力はそのまま譜読みの速さに直結します。
楽典:これは完全に大人が有利な分野です。理論の学習は読解力と論理の世界なので、参考書を1冊きちんと読める大人なら独学でも進みます。
そして週1回、レッスンで方向性のチェックを受ける。毎日の自習+定期的な軌道修正、この組み合わせが最短ルートです。私が高3の夏から間に合わせたのも、この形でした。
受験でも、受験でなくても
当教室では、ソルフェージュのレッスンに対応しています。音大受験を目指す方の受験対策としてはもちろん、「演奏の土台を作り直したい」という大人の方のソルフェージュも歓迎です。
ピアノのレッスンと組み合わせると効果は倍増します。ソルフェージュで鍛えた耳が、そのまま自分の演奏を聴く耳になるからです。始めるのに遅すぎることはありません——それは、私自身が証明しています。